山田建設、5階建てマンション強行へ

「平均地盤面」をてこに15メートル規制を形骸化

小泉邸と色づき始めたイチョウ
小泉邸と色づき始めたイチョウ(2002年秋に撮影)
北鎌倉・小泉邸跡地にマンション建設を計画している山田建設は9月29日、近隣約20戸に対し、「高さ14.80メートル、5階建て、販売戸数は62戸」を柱とする「(仮称)マイキャッスル 北鎌倉」<御近隣の皆様への御説明資料>を配付した。山田建設はこのマンション建設計画について既に、鎌倉市への事前相談を済ませている。今後、計画概要を掲示板で公表、市民から要求があれば住民説明会を実施し、平成16年1月6日に着工、同年10月末の完成を目指している。

■協議会の抗議文を無視

北鎌倉らしいまちづくりを目指している北鎌倉まちづくり協議会は6月21付けで、「マンション建設にあたっては景観に配慮し、鎌倉市の指導基準である15メートル以下、かつ4階建て以下にすべき」との内容の抗議文を山田建設に手渡した。

しかし、山田建設はこの抗議文を完全に無視し、平均地盤面という考え方を持ち出して、鎌倉市の指導基準を形骸化し、実質的に15メトルを超える5階建てのマンション建設を強行する構えだ。北鎌倉まちづくり協議会は今後に予定されている住民説明会を含めたあらゆる機会を通じて、山田建設に5階建てを断念、4階建て以下とするよう、強く迫る方針だ。

■実際の高さは15メートル以上

鎌倉市の場合、マンション建設に関し、高さについては法的な規制はかけていない。しかし、15メートルを超えたら、鎌倉市長の諮問機関である「都市計画審議会」の答申を得る必要があるとしている。山田建設が今回近隣住民に配付した資料によると1階あたりの高さ「階高」は3.01メートル。5階建ての計画だから単純計算すれば、高さは15メートルを突破、鎌倉市の指導基準を超えてしまう。

それなのに資料には「最高高さは14.80メートル」と明記されている。この矛盾を解くカギが、平均地盤面という考え方だ。マンション建設予定地は、道路側と線路が側では高さが違う。そこで両者の平均を取って、その数値を基準とすれば、一番低い道路側では5階建てでも高さは、鎌倉市の指導基準15メートル以下におさまるという論理だ。

■古都鎌倉の景観の享受は公共的利益

でもこれは一種の「まやかし」である。そもそも、この鎌倉市の指導基準は歴史、風土を考慮した鎌倉らしい街並みを保全するために作成されたもので、15メートル以下といえば4階建てというのが常識である。見た感じが大事なのだ。道路に面して5階建てのマンションが建設された姿を想像してほしい。他の建物から突出し、不調和をもたらすと同時に圧迫感を与え、北鎌倉の景観を台なしにしてしまう。

「景観権」を認めた国立マンション訴訟や名古屋の流れを踏まえ、ある地方裁判所の統括判事は、シンポジウムの席上で、古都鎌倉の景観保全に関し「景観を享受する利益は地域住民だけでなく、古都鎌倉を訪れる国民各人にも広く認められるものであって、公共的利益というべきものだ」と重要な指摘をしている。

■景観巡る行政の姿勢にも変化の波

司法の判断に歩調を合わせるかのように、かつては私的財産権制限になるとしてマンションの高さ制限に二の足を踏んでいた自治体の姿勢にも変化が見られるようになった。地域の景観や街並みを守り、住民と不動産業者らとの紛争を未然に防ぐために、マンションの高さ制限を設ける自治体が増えてきている。

開発一辺倒だった国も景観への認識を変えた。マスコミ報道によると、国土交通省は今年7月、歴史や文化、風土など地域の個性を重視しながら美しい国づくりを進めるため、景観の保全や水辺の再生に総合的に取り組む基本法制の制定など15の具体的な施策を盛り込んだ「美しい国づくり政策大綱」をまとめた。大綱は、地域の個性重視に加え(1)公共事業や建築の際には美しい景観をつくることを目的に含める(2)行政だけでなく民間非営利団体(NPO)、住民、企業などが継続的に取り組む―などを基本姿勢として示している。

■鎌倉市は毅然とした態度

マンション問題に取り組んでいる関係者の間では、高さを15メートル以下とした鎌倉市の指導基準は先駆的な施策として、高く評価されている。実際、「北鎌倉まちづくり協議会のHPを見て、計画中のマンションのことが分りましたが、鎌倉には『まちづくり条例』があり、それを適用できれば規制できるのではと思うのですが、実際はどうなのでしょうか」というメールが入った。

北鎌倉の景観は国民の「共有財産」といっても過言ではないだろう。平均地盤面をてこに、指導基準を形骸化しようとしている山田建設に対し、鎌倉市には指導基準作成の原点に立ち返り、毅然とした態度を取ることを期待したい。

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